コラム

痒疹(ようしん)、かゆみが止まらない!~片桐先生より~

今回のコラムは当院月曜日の皮膚科を担当していただいており、私の恩師でもあります片桐先生からの投稿です。当院のコラムに寄稿してくださりまして本当にありがとうございます。

私は片桐先生の影響でアトピー性皮膚炎の治療が大好きになってしまったほど、様々な皮膚病とその治療のコツについて教えていただきました。かゆみのお悩み、奥の深い痒疹(ようしん)について、皆様にお役立ていただけましたら幸いです。

副院長 清村咲子

 

痒疹、かゆみが止まらない!

「皮膚科にはいろんな病気があります」

皮膚科の病気では死なないだろうと思っている患者さんもいますが、悪性黒色腫(いわゆる「ほくろ」のガン)など、死に至る疾患もあります。日本人は手足に発症することが多く、早期発見すれば5年生存率(5年後に生きている確率)は100%近くですが、発見が遅れると50%以下になる場合もあります。気になる症状があれば、一度、皮膚科医にみてもらってください。

 

「痒いから皮膚科に行く」

最初から脱線しましたが、本題に入ります。皮膚科にはかゆみを伴う病気が多くあります。子供の頃からアトピー性皮膚炎患者であった私の皮膚科に対するイメージは「痒(かゆ)いから皮膚科に行く」でした。皮膚科医になってもその影響は強く残り、痒い皮膚病を治すのが大好きです。そして、治せない患者さんがいると、俄然やる気を掻き立てられ、いろいろ調べたり、工夫をしたり、治るためにできることをとことん探す、などしてきました。そうしているうちに、他で治らない患者が多く集まるようになり、かゆみが治りにくい病気を多く治療するようになりました。

 

「治しにくく、かゆみの強い2種類の痒疹」

このような経緯で診察にあたることが多くなった皮膚病は、重症のアトピー性皮膚炎と痒疹でした。アトピー性皮膚炎の重症患者も痒疹ができることが多く、似ている部分も多くあります。痒疹には大きく分けて、結節性痒疹と多形慢性痒疹の2種類があります。皮膚の症状が似ている部分と違う部分がありますが、強いステロイド外用薬やかゆみ止めの抗ヒスタミン薬内服で治りにくい点が共通しています。治りにくく、強いかゆみを伴う症状が続いている場合は「痒疹」かもしれないと思うことが必要です。「痒疹」には痒疹に効く治療をしなければ治りませんので、まずは診断が重要です。

 

「診断は簡単だが、治しにくい結節性痒疹」

直径5 mmから1 cm程度の小結節、結節(大きめのブツブツ)が、くっつかずに多発します。症状としてはわかりやすく、一目みれば診断できることが多い病気です。アトピー性皮膚炎に合併する「痒疹」も結節性痒疹に似ています。どうして発症するかはわかっていませんが、アトピー性皮膚炎に合併しやすいので、両者には共通した要素があると思われます。乾燥肌だったり、ストレスの影響を受けやすかったり、などが関係ありそうですが、はっきり証明されてはいません。

 

「正しく診断するのが難しい多形慢性痒疹」

蕁麻疹(ジンマシン)みたいな浮腫性紅斑(すこし盛り上がった、赤い発疹)が、腰部、側腹部、側胸部、下腹部などを中心に出現します。ジンマシンは数時間から1日で消えますが、多形慢性痒疹の皮疹は短時間では消えません。このような紅斑に、結節性痒疹のような「大きめのブツブツ」が混ざってくることがあり、ブツブツが連なることもあります。100人以上の患者の年齢を調べたところ、平均70歳でした。診察になれないと診断が難しい場合も多く、治療も難しいため、難民のように、いろんな医療機関を渡り歩いている患者さんもよく見かけます。10年、30年と同じ症状が続いていたという患者さんにも何度も遭遇しました。赤くて、痒くて、治らない、こんな場合は、多形慢性痒疹かもしれません。30代の患者はほとんどいないので、加齢が影響していると思われますが、どうして発症するかはわかっていません。

 

「痒疹の治療」

とても多くの痒疹患者の治療をしてきましたので、自分なりの痒疹の治療方針が決まり、「片桐式痒疹治療アルゴリズム」として、実際の治療を行っています。治りにくいのが「痒疹」の特徴と書きましたが、簡単な、普通の治療で治ることもありますので、まず、しっかりした外用治療(塗り薬)とかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)の内服を行います。効果がなければ、かゆみ止めを2種類内服する、さらに治らなければ、他の薬剤を加えて行く、紫外線治療を追加する、など、今までの経験から作成したステップアップ式の治療を行います。かゆみが強く、苦痛の強い病気ですので、できるだけ早く効果がでるように、短期間で治療方針を見直していきます。

 

「治療効果と長期経過の見通し」

70%の患者さんは、比較的簡単な治療で、強いかゆみは無くなります。しかし、治りにくい場合もあります。その場合は、いろいろな方法で治療を重ねます。また、短期間でかゆみは減っても、薬を減らす、あるいは、中止すると症状が再燃する場合もあります。長期化した場合には、かゆみの苦痛と治療の副作用のどちらを優先するか、患者さんと話し合いながら治療を進めていきます。

 

【似ている病気】

  • アトピー性皮膚炎(省略)
  • アミロイド苔癬(とても痒い、四肢伸側などに多い、結節性痒疹よりすこし小型のブツブツが一部に集まっている、これもアトピー性皮膚炎に合併することあり)
  • 貨幣状湿疹(冬期に、乾燥肌があり、100円玉程度の発疹ができる痒い病気だが、塗り薬で簡単に治る、治らない時や夏期に同じ症状がある場合は、痒疹の可能性あり)

 

【間違いやすい皮膚病】

  • 水疱性類天疱瘡(水ぶくれができないタイプは結節性痒疹に似る、診断が難しい)
  • 疥癬(ヒゼンダニ:人から人にうつる病気)

 

患者さんへ

「痒疹」は痒くて、治りにくいので、患者だけでなく、治したいけど治せない皮膚科医にも苦痛の強い病気です。辛抱強く治療を続け、また、いままでの治療への反応性も参考にして、副作用に注意しつつ、利用可能な治療法を探してみましょう。

 

 

投稿者:片桐一元先生

キーワード:痒み、アトピー性皮膚炎、痒疹、結節性痒疹、多型慢性痒疹、片桐式痒疹治療アルゴリズム、アミロイド苔癬、貨幣状湿疹、水疱性類天疱瘡、疥癬

 

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